TEM(脅威とエラーのマネジメント)とは|脅威・エラー・アンデザイアブルステートの管理を現役パイロットが解説

安全管理・ヒヤリハット
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TEM(脅威とエラーのマネジメント)とは|脅威・エラー・アンデザイアブルステートの管理を現役パイロットが解説

✈ 学科・口述試験対策 📖 読了約10分
📋 この記事でわかること
  • TEM(Threat and Error Management)の定義と目的
  • 脅威(Threat)・エラー(Error)・アンデザイアブルステート(UAS)の3要素
  • 各要素に対するマネジメント戦略
  • CRMとTEMの関係
  • 口述試験で問われるポイントと模範回答

「脅威をいくつ特定できるか」より「脅威をどう管理してエラーを防ぐか」——TEMはパイロットの安全行動を評価・訓練するための国際標準フレームワークです。ICAOが採用し、航空会社のLOFT(Line Oriented Flight Training)や審査でも活用されています。口述試験では「CRMとの違い」や「3要素の説明」が問われる頻出テーマです。ヘリコプターだけでなく飛行機のパイロットを目指す方にも共通して役立つ内容です。

✓ この記事が役立つ人
  • 安全管理に関する口述試験を控えている方
  • TEM・CRMの違いを正確に説明できるようになりたい方
  • フライト前・中の脅威管理を体系的に理解したい方
⚠ こんな方は先に基礎を
  • CRM(クルー・リソース・マネジメント)の基本をまだ学んでいない方
  • ヒューマンファクターとDirty Dozenをまだ理解していない方

✈ 「CRM(クルー・リソース・マネジメント)とは|5つのスキルと航空安全への活用を解説」を読む →

目次
  1. TEMとは何か|定義と背景
  2. TEMの3要素:脅威・エラー・アンデザイアブルステート
  3. 脅威(Threat)のマネジメント
  4. エラー(Error)のマネジメント
  5. アンデザイアブルステート(UAS)のマネジメント
  6. CRMとTEMの関係
  7. 口述試験Q&A
  8. まとめ

01 TEMとは何か|定義と背景

定義
TEM(Threat and Error Management:脅威とエラーのマネジメント)とは、航空運航において、パイロットが直面する脅威(Threat)とエラー(Error)を認識・管理し、望ましくない航空機の状態(Undesired Aircraft State:UAS)の発生を防止するための安全管理フレームワークをいう。ICAOが推奨し、世界的に標準化されている。

TEMは1990年代後半にテキサス大学ヒューマンファクター研究プロジェクトによって開発されました。それまでの安全研究が「エラーをなくすこと」に焦点を当てていたのに対し、TEMは「エラーは避けられない。だからエラーを適切に管理することが重要」という現実的な視点に立っています。

🙋

学生パイロット

「エラーをゼロにする」のが目標じゃないんですか?
人間はエラーを犯す生き物です。どれだけ訓練しても完全にゼロにはできない。だからTEMでは「エラーが起きたとき、それをどう検知して修正するか」という管理の視点が重要になります。エラーを「あってはならないこと」ではなく「管理すべきもの」として捉えるのがポイントです。

教官

🔑 TEMが生まれた背景
航空事故分析の結果、事故の多くは単一のエラーではなく、複数の脅威とエラーが連鎖した結果であることが明らかになった。TEMはこの「エラーチェーン」を可視化し、どこで連鎖を断ち切るかを体系化したフレームワーク。

02 TEMの3要素:脅威・エラー・アンデザイアブルステート

TEMの核心は3つの要素の関係性を理解することです。この3要素が連鎖することで事故につながるメカニズムを把握し、各段階でどう介入するかがTEMの実践です。

要素 定義・概要
脅威(Threat) パイロットのコントロール外に存在し、運航の安全を複雑化させる出来事や状況。悪天候・空港混雑・機材不具合など
エラー(Error) パイロットの行動または不作為のうち、意図した結果から外れたもの。操作ミス・判断ミス・コミュニケーションミスなど
アンデザイアブルステート(UAS) 脅威やエラーの結果として生じた、安全マージンが低下した航空機の状態。速度逸脱・空間識失調・CFIT接近など
🙋

学生パイロット

3つの関係性はどうなっているんですか?
「脅威→エラー→UAS→事故」という連鎖が基本の流れです。脅威が管理できないとエラーが生じやすくなり、エラーを管理できないとUASに陥り、UASを回復できないと事故になる。TEMはこの連鎖のどこでも介入できる考え方です。

教官

03 脅威(Threat)のマネジメント

脅威(Threat)とは
脅威とは、パイロットが直接引き起こしたわけではないが、運航を複雑にし安全マージンを低下させる可能性のある外部の出来事・状況・エラーをいう。脅威は「予期できる脅威」と「予期できない脅威」に分類される。
脅威の分類 具体例
環境的脅威 悪天候(低視程・着氷・乱気流)、夜間・山岳地形、低い雲底
飛行場・空域の脅威 滑走路閉鎖・NOTAMによる制限・混雑した空域・不慣れな飛行場
航空機の脅威 機材不具合・計器異常・MEL(最低装備品リスト)搭載品の不具合
運航上の脅威 高いワークロード・ATC交信の複雑さ・時間的プレッシャー・疲労
組織的脅威 不十分なブリーフィング・整備の問題・不適切な手順書

脅威管理の基本は「脅威を事前に認識し、その影響を最小化する対策を講じること」です。フライト前ブリーフィングで想定される脅威をリストアップし、対処方法を確認しておくことが有効です。

🔑 脅威マネジメントの3段階
①予測(Anticipate):飛行前に発生しうる脅威を予測する。②認識(Recognize):飛行中に脅威が顕在化した際に気づく。③対処(Respond):適切な対策を実行して脅威の影響を管理する。この3段階を意識することが脅威管理の実践。

04 エラー(Error)のマネジメント

エラー(Error)とは
エラーとは、パイロットの行動または不作為が意図した結果・標準手順・期待される結果から外れた状態をいう。TEMではエラーを「検知されたエラー」と「検知されなかったエラー」に区別し、検知と修正の重要性を強調する。
エラーの種類 内容・例
操作エラー 誤ったスイッチ操作、不適切なコントロール入力など手順上のミス
手順エラー チェックリストの省略・手順の間違い・SOPからの逸脱
コミュニケーションエラー 管制指示の聞き間違い・リードバックミス・クルー間の情報伝達ミス
判断・決定エラー 誤った状況判断・不適切なリスク評価・GO/NO-GOの誤判断

エラーマネジメントの要点は「エラーを素早く検知し、UASに至る前に修正すること」です。エラーを認めることへの心理的抵抗を排除し、クルーが率直に指摘し合える環境(心理的安全性)が、エラー検知の精度を高めます。

🔑 エラーの3つの結果
エラーが発生すると以下の3つの結果のいずれかになる。①検知・修正(Trapped):エラーに気づき修正して影響を排除する(最善の結果)。②管理(Exacerbated):エラーが悪化して追加のエラーや脅威を生む。③UASへの移行(Led to UAS):エラーが修正されずアンデザイアブルステートに至る。

05 アンデザイアブルステート(UAS)のマネジメント

アンデザイアブルステート(UAS)とは
アンデザイアブルステート(Undesired Aircraft State:UAS)とは、脅威やエラーの結果として航空機が安全マージンが低下した状態に置かれることをいう。UASは「事故の前段階」であり、ここで適切な回復操作ができるかどうかが最後の防衛線となる。
UASの例 対応・回復方針
速度逸脱(高速・低速) 速やかにパワー・ピッチを修正して規定速度帯へ回復
高度逸脱 ATC承認高度からの逸脱は即時報告・修正
経路逸脱 クリアランスルートからの逸脱を認識し正規経路へ復帰
CFIT接近(対地接近) GPWS/EGPWSアラートへの即時回復操作(Pull up等)
空間識失調 計器飛行への切り替え・計器のみに依存した姿勢回復
UASを放置することの危険性
UASは「まだ事故ではない」状態だが、放置すると急速に事故へ発展する。UASを認識した瞬間に回復操作を優先し、原因究明はUASを脱してから行うことが原則。「状況改善よりまず安全確保」の優先順位を徹底する。

06 CRMとTEMの関係

口述試験では「CRMとTEMの違い」または「関係」を問われることがあります。両者は異なる概念ですが、密接に連動しています。

比較項目 CRM TEM
定義 人的リソース(クルー・機材・情報)を最大活用する技術・姿勢 脅威・エラー・UASを管理する安全フレームワーク
焦点 クルーの行動・コミュニケーション・意思決定 脅威とエラーの発生・管理・結果の連鎖
位置づけ スキルセット・行動規範 安全管理の分析・評価フレームワーク
関係 CRMスキルがTEMの脅威・エラー管理の実践手段となる。TEMはCRMがどれだけ機能しているかを評価する枠組みとして活用される
🔑 シングルパイロット運航(SRM)とTEM
ヘリコプターの多くはシングルパイロット運航であり、CRMの「クルー間」コミュニケーションではなく、SRM(Single-pilot Resource Management)が適用される。TEMの脅威・エラー・UASの概念はシングルパイロット環境でも同様に適用され、自己モニタリング・判断・フライト前の準備がより重要になる。

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07 口述試験Q&A

安全管理に関する口述試験でTEMについて問われやすい質問と模範回答です。

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試験官

TEMとは何ですか?3つの要素を挙げて説明してください。
TEMとは脅威とエラーのマネジメントの略で、航空安全のフレームワークです。3要素は、外部から持ち込まれる脅威(Threat)、パイロットの行動のミスであるエラー(Error)、そしてそれらの結果として生じる望ましくない航空機の状態であるアンデザイアブルステート(UAS)です。この連鎖を各段階で管理することが目的です。

受験者

キーワード:脅威・エラー・アンデザイアブルステート・連鎖管理

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試験官

脅威(Threat)の具体例を3つ挙げてください。
悪天候(低視程・着氷・乱気流)、機材不具合(計器異常・MEL搭載品の不具合)、運航上のプレッシャー(高ワークロード・時間的制約・ATC交信の複雑さ)の3つが代表的です。いずれもパイロットが直接引き起こしたものではない外部の状況です。

受験者

キーワード:悪天候・機材不具合・ワークロード・外部要因

👨

試験官

エラーが発生した場合の3つの結果を述べてください。
エラーが検知・修正されること(Trapped)、エラーが悪化して追加のエラーや脅威を生むこと(Exacerbated)、エラーが修正されずアンデザイアブルステートに至ること(Led to UAS)の3つです。最善はエラーをTrapすることで、UASへ移行させないことが重要です。

受験者

キーワード:Trapped・Exacerbated・Led to UAS・エラーの3結果

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試験官

CRMとTEMはどのような関係にありますか?
CRMはクルーのリソースを最大活用するためのスキルセットであり、TEMはその運用環境における脅威・エラー・UASの管理フレームワークです。CRMのスキル(コミュニケーション・意思決定・状況認識)がTEMの各段階の管理手段として機能し、TEMはCRMの有効性を評価する枠組みにもなります。

受験者

キーワード:CRMスキル・TEM評価枠組み・相互補完

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試験官

アンデザイアブルステートに陥った場合の優先事項は何ですか?
まず航空機を安全な状態に回復させることを最優先とします。UASを認識したら回復操作を即時実施し、原因究明はUASを脱してから行います。「状況改善より安全確保が先」という優先順位が原則です。

受験者

キーワード:安全確保優先・即時回復・原因究明は後

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まとめ

  • TEMとは脅威・エラー・アンデザイアブルステートの3要素の連鎖を管理するICAO標準の安全フレームワーク
  • 脅威はパイロット外部の要因(悪天候・機材不具合・ワークロード等)であり、予測・認識・対処の3段階で管理する
  • エラーが発生した場合の結果は「Trapped(検知修正)」「Exacerbated(悪化)」「Led to UAS(UASへ移行)」の3種類
  • UASは事故の前段階。認識した瞬間に回復操作を優先し、安全確保を最優先とする
  • CRMスキルがTEM各段階の実践手段となり、TEMはCRMの有効性を評価する枠組みとして機能する

【免責事項】本記事は口述試験対策を目的とした解説記事です。記載内容は執筆時点の情報に基づいており、法令・制度の詳細は変更される場合があります。実際の飛行および試験準備にあたっては、最新のAIP(航空路誌)・航空法令・所属訓練機関の指示を必ずご確認ください。
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