気象
ウィンドシアーと低層乱気流
定義
ウィンドシアー(Wind Shear)とは、ある距離内において風向・風速が急激に変化する現象をいう。水平面内での変化を水平ウィンドシアー、高度差に対する変化を垂直ウィンドシアーと呼ぶ。特に地上〜1,600ft以下の低層ウィンドシアーは離着陸中の航空機に突然の速度・高度変化をもたらし、航空安全上の最重要脅威のひとつとされる。
01ウィンドシアーとは
ウィンドシアーは「目に見えない危険」とも言われる。雲がなく天気が良い日でも発生することがあり、進入中に突然対気速度が変化して高度を失うケースがある。実際の航空事故でも低層ウィンドシアーが原因のものは多く、特に離着陸中のパイロットは常に警戒が必要。
| 種類 | 内容 |
|---|---|
| 水平ウィンドシアー | 水平面内での風向・風速の急変。同じ高度でも場所によって風が大きく異なる |
| 垂直ウィンドシアー | 高度差に対する風向・風速の変化。低高度での垂直シアーが飛行安全に最も大きな影響を与える |
| 低層ウィンドシアー | 地表〜1,600ft以下で発生するウィンドシアー。離着陸時に遭遇リスクが最も高い |
02ウィンドシアーの発生原因
| 発生原因 | 内容 |
|---|---|
| 積乱雲(雷雨) | ダウンバースト・ガストフロントを伴う激しいシアーが発生する。最も危険なシアーの原因。積乱雲の存在しない晴天空域にも影響が及ぶことがある |
| 前線通過 | 前線面付近での風向・風速の急変。特に活発な寒冷前線で強いシアーが生じる。前線通過前後の風の急変に注意 |
| 接地逆転層 | 地表の熱放射で形成される逆転層の上下で風が大きく異なることがある。特に夜間・早朝の安定した大気で発生しやすい |
| 地形・建造物 | 山岳・建物・木立などの風下側に乱流が発生しシアーが生じる。空港周辺の建造物・丘陵も影響源になる |
03ダウンバーストとマイクロバースト
ダウンバーストは積乱雲の下などで発生する強烈な下降気流が地表付近で水平方向に広がる現象で、進入中の航空機にとって極めて危険。特に小型のマイクロバーストは発生・消滅が急で予測が困難。
| 種類 | 特徴 |
|---|---|
| ダウンバースト | 積乱雲下の強烈な下降気流が地表で水平拡散する現象。持続時間5〜30分。最大風速120ktに達することがある |
| マイクロバースト | 吹き出し口直径4km以下の局地的なダウンバースト。最大風速45kt以上になることも。急激な発生・消滅が特徴 |
| 初期突風(First Gust) | 雷雨が接近する直前に地上付近に起こる突風。風向が180度変わることもある。離着陸中の航空機に極めて危険 |
⚠ 進入中にダウンバーストに突入すると「向い風増加→IAS増加→高度上昇→その後追い風→IAS急減→高度急低下」という危険なパターンが生じる。高度上昇したからといって安心してはいけない。次の瞬間に高度を急激に失う可能性がある。
04ウィンドシアーの影響と兆候
| 状況 | 機体への影響 |
|---|---|
| 向い風の急減・追い風の急増 | IASが減少し機首が下がる・高度が下がる。対処:推力を増加させることが第一手段 |
| 向い風の急増・追い風の急減 | IASが増加し機首が上がる・高度が上がる。次の瞬間に逆方向のシアーが来る可能性がある |
🔑 ウィンドシアーの兆候:①対流活動のある周辺(レーダーエコーが強から弱に変わるとき)②風向・風速が短時間に変化しているとき③飛行場地表面でちりや砂が風に吹き上げられるガストフロントの徴候があるとき。これらが複数重なっていればウィンドシアーの可能性が高い。
05低層乱気流の種類
| 種類 | 特徴・発生条件 |
|---|---|
| 積乱雲による乱気流 | 最も激しい乱気流。積乱雲の雲底付近・周辺部でも激しい乱気流が生じる。雲底から少なくとも2,000ft以上離れること |
| ウェイクタービュランス | 大型機の航跡に残るウィングチップボルテックスによる乱気流。高気圧域・弱風時に長時間残留。小型機は特に注意。離着陸間隔の基準がある |
| 地形による乱気流 | 山岳・建物・木立などの風下側に発生。日本は山地が多く低地でも発生しやすい。強風時は空港周辺でも乱気流が生じる |
06口述試験 Q&A
Q低層ウィンドシアーの発生しやすい気象条件を述べよ。
積乱雲に伴うダウンバースト・ガストフロント、活発な寒冷前線通過時、接地逆転層が形成されているとき、地形や建造物の風下側などで低層ウィンドシアーが発生しやすい。特に積乱雲に伴うダウンバーストは最も危険なシアーをもたらし、晴天域にも影響が及ぶことがある。
積乱雲(ダウンバースト)・前線通過・接地逆転層・地形風下が主な発生条件。
Q進入中に向い風が急減した場合の機体への影響と対処を述べよ。
向い風が急減すると対気速度(IAS)が急激に減少し、揚力が低下して機首が下がり高度が下がる。この状態で対応が遅れると急激な高度損失が生じ着陸手前で接地するリスクがある。対処の第一手段は推力を増加させることである。状況によってはゴーアラウンドを行うことも考慮する。
向い風急減→IAS減少→揚力低下→機首下がり・高度低下。推力増加が第一対処。必要に応じてゴーアラウンド。
まとめ
- ✓ウィンドシアーは風向・風速の急変現象。低高度シアーが飛行安全に最も危険。
- ✓ダウンバーストは積乱雲下の強烈な下降気流が地表で水平拡散。マイクロバーストは直径4km以下の局地型。
- ✓向い風急減・追い風急増→IAS減少→高度低下。推力増加が第一対処。
- ✓進入中に高度が上昇しても安心しない。次の瞬間に逆方向シアーで急落下の可能性がある。
- ✓ウェイクタービュランスは大型機航跡に長時間残留。小型機は特に間隔に注意。

