航空法規
航空身体検査証明の種類と有効期間|第一種・第二種の違い
01航空身体検査証明とは
航空身体検査証明(法31条〜32条)
航空身体検査証明とは、国土交通大臣または指定航空身体検査医が、技能証明を有する者で航空機に乗り組んでその運航を行おうとする者について行う身体検査の証明です。身体検査証明は、申請者に航空身体検査証明書を交付することによって行われます(法31条)。
技能証明を持っていても、有効な航空身体検査証明を持っていなければ航空業務を行うことはできません。航空身体検査証明の有効期間はICAO ANNEX 1に準拠して、技能証明の資格ごとに、当該航空身体検査証明を受ける者の証明書の交付日における年齢および心身の状態ならびにその者が乗り組む航空機の運航の態様に応じて定められています(法32条)。
02航空身体検査証明の種類
航空身体検査証明には第一種と第二種があり、要求される身体基準の厳しさが異なります。
| 種類 | 適用される技能証明 | 身体基準の特徴 |
|---|---|---|
| 第一種 | 定期運送用操縦士・事業用操縦士・准定期運送用操縦士・航空機関士 | 最も厳格な基準。視力・心肺機能・精神的適性等の高い水準が求められる。 |
| 第二種 | 自家用操縦士・一等/二等航空士・航空通信士 | 第一種より緩和された基準。ただし飛行の安全に必要な最低限の身体要件は満たす必要がある。 |
🔑 ヘリコプターの事業用操縦士として勤務する場合は第一種航空身体検査証明が必要です。自家用操縦士として趣味で飛ぶ場合は第二種で足ります。
03有効期間の詳細(資格・年齢別)
有効期間は資格・年齢・飛行の種類によって細かく定められています。
| 対象者 | 有効期間 |
|---|---|
| 定期運送用操縦士・事業用操縦士(40歳未満) | 1年(ただし航空運送事業の用に供する航空機に乗り組んで操縦を行う60歳以上の者は6ヶ月) |
| 定期運送用操縦士・事業用操縦士(40歳以上) | 1年(ただし航空運送事業の用に供する航空機に乗り組んで操縦を行う60歳以上の者は6ヶ月) |
| 自家用操縦士(40歳未満) | 5年または有効期間の起算日(証明書の交付日)から42歳の誕生日の6ヶ月前の日、もしくは42歳以上50歳未満の者は2年または有効期間の起算日から51歳の誕生日の期間のうちいずれか短い期間 |
| 自家用操縦士(50歳以上) | 1年 |
| 准定期運送用操縦士 | 1年(ただし航空運送事業の用に供する航空機に乗り組んで操縦を行う60歳以上の者は6ヶ月) |
| その他の航空機乗組員 | 1年 |
🔑 有効期間の3パターンを確実に覚える:①航空運送事業の60歳以上の操縦者は6ヶ月、②自家用の40歳未満は最大5年(年齢に応じた上限あり)、③その他は原則1年。
また、航空身体検査の有効期間にかかわらず、身体検査の結果、当該有効期間を経過する前に身体検査基準に適合しなくなるおそれがあると認められる者については、有効期間が短縮されることがあります。
04身体障害・業務停止の規定
身体障害(法71条)
航空機乗組員は、航空法第31条第3項の身体検査基準に適合しなくなったときは、航空身体検査証明の有効期間内であっても、その航空業務を行ってはならない(法71条)。
これは非常に重要な規定です。身体検査証明が有効期間内であっても、身体検査基準に適合しなくなった場合(病気・負傷等)は直ちに航空業務を停止しなければなりません。「有効期間内だから大丈夫」という判断は誤りであり、自己申告による業務停止が義務付けられています。
| 状況 | 対応 |
|---|---|
| 身体検査基準に適合しなくなった | 証明の有効期間内でも即座に航空業務を停止。回復後は再検査が必要。 |
| アルコール・薬物の影響 | 血液1Lにつき0.2g以上または呼気0.09mg/L以上のアルコール濃度、またはこれらの影響により正常な運航ができないおそれがある状態では航空業務禁止(法70条)。 |
| 服薬・薬物使用 | 航空業務に支障をきたすおそれのある薬物の影響がある場合も業務禁止。処方薬であっても確認が必要。 |
アルコール規制について:航空法は飛行前12時間以内の飲酒を禁止する規定(通達)があります。血中アルコール濃度の法的基準(0.2g/L)に加え、「正常な運航ができないおそれがある状態」という包括的な基準があるため、前夜の飲酒であっても翌朝のフライトに影響がある場合は業務停止義務があります。
05航空英語能力証明との関係
航空英語能力証明(法33条)
定期運送用操縦士・事業用操縦士・自家用操縦士または准定期運送用操縦士の資格についての技能証明(当該技能証明について限定をされた航空機の種類が飛行機および回転翼航空機であるものに限る)を有する者は、その航空業務に従事するために必要な航空に関する英語(「航空英語」)を有することを国土交通大臣が行う航空英語能力証明を受けていなければ、一定の国際飛行を行ってはならない。
航空英語能力証明が必要な飛行は以下の通りです。①本邦内の地点と本邦外の地点との間において行う飛行、②本邦外の各地間において行う飛行(本邦以外の国の領域を航行するものに限る)、③本邦内から出発して着陸することなしに本邦以外の国の領域を通過し、本邦内に到達する飛行。
| 言語能力レベル | 有効期間 |
|---|---|
| レベル4(ICAOレベル4相当) | 3年 |
| レベル5(ICAOレベル5相当) | 6年 |
| レベル6(ICAOレベル6相当) | 無期限 |
06口述試験 Q&A
航空身体検査証明の第一種と第二種の違いを説明してください。
第一種航空身体検査証明は定期運送用操縦士・事業用操縦士・准定期運送用操縦士・航空機関士に必要なもので、最も厳格な身体基準が適用されます。第二種は自家用操縦士・航空士・航空通信士に適用され、第一種より緩和された基準です。事業として報酬を受けて飛行する操縦者には高い身体基準が求められており、これは乗客の安全を守るためです。
キーワード:第一種=事業用以上・最も厳格 / 第二種=自家用・緩和基準 / 事業飛行には第一種必須
航空身体検査証明の有効期間について説明してください。特に注意すべきケースは?
有効期間は資格・年齢・飛行の種類によって異なります。原則として定期運送用・事業用操縦士は1年です。特に注意すべきは、航空運送事業の用に供する航空機で操縦を行う60歳以上の者の有効期間が6ヶ月に短縮される点です。自家用操縦士の40歳未満の者は最大5年ですが、年齢に応じた上限があります。また有効期間内であっても身体検査基準に適合しなくなった場合は直ちに業務を停止しなければなりません。
キーワード:60歳以上の運送事業操縦者は6ヶ月 / 自家用40歳未満は最大5年 / 証明有効でも不適合なら業務停止義務
身体検査証明が有効期間内でも航空業務を停止しなければならない場合はどのような時ですか?
身体検査証明が有効期間内であっても、身体検査基準に適合しなくなったとき(病気・負傷等)は直ちに航空業務を停止しなければなりません(法71条)。また血液1Lにつき0.2g以上のアルコール濃度または呼気0.09mg/L以上のアルコール濃度を保有している場合、または薬物の影響により正常な運航ができないおそれがある状態でも業務禁止です。「証明が有効だから飛べる」ではなく、飛行時点での身体状態が基準を満たしていることが常に要件です。
キーワード:証明有効でも①身体基準不適合②アルコール基準超過③薬物影響あり→業務停止義務(法71条)
航空英語能力証明はどのような飛行に必要ですか?有効期間は?
航空英語能力証明は国際飛行(日本と外国を結ぶ飛行・外国の各地間の飛行・外国領域を通過する飛行)を行う操縦士に必要です。有効期間はICAOの言語能力レベルによって異なり、レベル4は3年、レベル5は6年、レベル6(最高位)は無期限です。国内飛行のみを行う場合は取得義務はありませんが、国際線や外国機を操縦する際には必須の証明です。
キーワード:国際飛行に必要 / レベル4=3年・レベル5=6年・レベル6=無期限
アルコールに関する航空法の規定(法70条)の基準値を答えてください。
航空法第70条では、血液1Lにつき0.2g以上のアルコール濃度、または呼気1Lにつき0.09mg以上のアルコール濃度を保有している場合は航空業務禁止とされています。また基準値以下であっても、アルコールの影響により正常な運航ができないおそれがある状態も業務禁止です。さらに通達により飛行前12時間以内の飲酒も禁止されており、前夜の飲酒であっても翌朝に影響がある場合は業務を停止しなければなりません。
キーワード:血液0.2g/L以上または呼気0.09mg/L以上→業務禁止 / 飛行前12時間以内飲酒禁止(通達)
まとめ
- ✓第一種:事業用・定期運送用・准定期・機関士。第二種:自家用・航空士・通信士。
- ✓有効期間の原則:事業用以上は1年。60歳以上の運送事業操縦者は6ヶ月。自家用40歳未満は最大5年。
- ✓証明が有効でも、身体基準不適合・アルコール超過・薬物影響がある場合は業務停止義務(法71条)。
- ✓アルコール基準:血液0.2g/L以上または呼気0.09mg/L以上の場合業務禁止(法70条)。
- ✓英語能力証明:国際飛行に必要。レベル4=3年、レベル5=6年、レベル6=無期限。
【免責事項】本記事は口述試験対策を目的とした解説記事です。記載内容は執筆時点の情報に基づいており、法令・制度の詳細は変更される場合があります。実際の飛行および試験準備にあたっては、最新のAIP(航空路誌)・航空法令・所属訓練機関の指示を必ずご確認ください。

