航空安全の基本とは|安全対策・ヒヤリハット・SMSを現役パイロットが解説

安全管理・ヒヤリハット
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航空安全の基本とは|安全対策・ヒヤリハット・SMSを現役パイロットが解説

📖 読了約10分
✈ この記事でわかること
  • 航空安全とは何か(ICAO条約附属書の定義)
  • パイロットが日常的に取り組むべき安全対策の3つの柱
  • ヒヤリハットとは何か・報告制度(VOICES)の仕組み
  • 安全管理システム(SMS)の概要
  • 口述試験で頻出のQ&A 5問

「安全」という言葉はパイロット訓練のあらゆる場面で出てきます。しかし「航空安全とは具体的に何を指すのか」と問われると、意外とうまく説明できない受験者が多いのも事実です。現役パイロットとして、日々の運航で安全をどう意識しているかをもとに、試験で確実に答えられる形で整理しました。この記事を読めば、安全の定義・対策の体系・ヒヤリハット制度まで一気に整理できます。

✓ この記事が役立つ人
  • 口述試験で「航空安全とは」を問われた方
  • ヒヤリハット・SMSの概念を整理したい方
  • 安全系カテゴリーの基礎を固めたい訓練生
⚠ こんな方は先に基礎を
  • 航空法の基本的な体系がまだ不明確な方

✈ 「航空法の目的と基本的な考え方」を読む →

01航空安全とは

航空安全の定義(ICAO条約第19附属書)
航空安全とは、航空機の運航に関係する、または航空機の運航を支援する活動における、リスクが受け入れ可能なレベルまで低減され制御されている状態をいう。安全に係るリスクは、航空事故や航空の安全運航に影響を及ぼす可能性のある要因(ハザード)が引き起こす事象の発生確率と重大度の組み合わせで示される。

航空安全は、運航に直接関係する部門だけではなく、運航を支援するさまざまなシステム全体の密接な連携によって達成されるものです。パイロット単独の努力だけでなく、整備・管制・気象・運航管理など全ての部門が連携して初めて成立します。

🔑 「安全=ゼロリスク」ではない:安全の定義は「リスクがゼロ」ではなく「リスクが受け入れ可能なレベルまで低減・制御されている状態」です。試験でこの点を問われることがあります。

02安全対策の3つの柱

パイロットとして安全に携わる上で、常に心がけるべき3つの柱があります。これは口述試験でも頻出のポイントです。

柱 1
過去の事故・失敗例を知ること過去の航空事故や失敗事例を知ることは、起こり得る可能性を先取りして結果を予測するという最も効果的かつ重要な役割を果たします。公的機関から発行された事故調査報告書・安全報告などが有効な資料です。

柱 2
不安全要素を早期に取り除くこと機械的・人的要素の両面において経験的に判っている不安全要素や結果として不安全を予測できる要素は速やかに除去する、あるいは取り除くことが不可能であれば運航を中断すべきです。

柱 3
運航にあたって十分な余裕をもつこと精神的・時間的・物理的な余裕が正しい判断を行う上で必要不可欠な要素です。余裕のない状態での飛行は判断ミスのリスクを大幅に高めます。

🙋

学生パイロット

「余裕をもつ」というのは具体的にどういうことですか?

教官

体力的に疲れていないか、時間的に焦っていないか、気持ちに余裕があるかという3つです。フライト前にこの3つを自己チェックする習慣が大切です。どれかひとつでも欠けていたら、それがリスクになります。

03不安全要素の抽出と除去

不安全要素とは
航空機の運航を支えているトータルシステムの中から不安全要素を抽出して改善することは航空界全体の責務である。日常の運航のあらゆる局面にひそむ不安全要素を見逃してはならない。そのためにパイロットは何が不安全要素であるかを熟知し、それに敏感であることが大切である。

不安全要素は大きく「人・機械・環境」の3要素に分類されます。これらの事故要因を連鎖させず途中で断ち切ることがパイロットに可能な安全策といえます。

要素 主な内容 具体例
人的要素 疲労・判断ミス・技量不足・コミュニケーション不足 過労によるチェックリスト確認漏れ
機械的要素 機材の整備不良・装備品の不具合・設計上の問題 整備未実施による機器故障
環境的要素 気象・空域・飛行場環境・組織文化 予期しない気象悪化・管制ミス
「このくらいなら大丈夫」が最も危険:不安全要素を認識しながらも「許容範囲」と判断して続行することが重大事故の引き金になります。疑問があれば必ず確認・中断する判断が求められます。

04ヒヤリハットと自発報告制度(VOICES)

航空安全情報自発報告制度(VOICES)
VOICES(Voluntary Information Contributory to Enhancement of the Safety)とは、民間航空の安全に支障を及ぼす可能性のあった事象(いわゆるヒヤリハット)に関する情報を幅広く収集・分析・共有することにより、航空事故等の予防的対策等の実施に役立てることを目的とした制度である。報告者が不利益処分を受ける懸念を排除するため、第三者機関である公益財団法人航空輸送技術研究センター(ATEC)により運営されている。
項目 内容
目的 ヒヤリハット情報の収集・分析・共有による事故予防
運営機関 公益財団法人航空輸送技術研究センター(ATEC)
報告者保護 第三者機関が運営することで不利益処分の懸念を排除
情報処理 ヒアリング等で内容確認後、個人・会社特定されないよう匿名化・分析・公表
🔑 なぜ第三者機関が運営するのか:報告者が所属会社に不利益処分を受けるリスクを排除するためです。安心して報告できる環境が、安全情報の収集・共有につながります。

05安全管理システム(SMS)

SMS(Safety Management System:安全管理システム)
国土交通省航空局はICAO条約第19附属書の規定に従い、民間航空の安全確保のための施策を定めた航空安全プログラム(SSP:State Safety Programme)を策定している。運航者・空港管理者・航空保安業務提供者は、航空安全プログラムに沿って安全に対する方針や目標を明確にし、目標達成のための管理計画を立てて、それに必要な措置を講じるといった安全を系統立てて確保する安全管理システム(SMS)を設置することになっている。
構成要素 内容
安全方針・目標 組織としての安全に対する基本姿勢と達成すべき目標を明文化する
リスク管理 ハザードを特定し、リスクを評価・軽減するプロセス
安全保証 安全対策の有効性を継続的にモニタリング・評価する
安全促進 訓練・教育・安全文化の醸成により組織全体の安全意識を高める

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06口述試験 Q&A

👨

試験官

航空安全とは何ですか?

受験者

航空機の運航に関係する活動において、リスクが受け入れ可能なレベルまで低減され制御されている状態をいいます。安全はゼロリスクではなく、ハザードが引き起こす事象の発生確率と重大度を管理・低減することで成立します。
リスクが受け入れ可能なレベルまで低減・制御・ゼロリスクではない
👨

試験官

パイロットが安全対策として心がけるべき3つの柱を答えてください。

受験者

①過去の事故・失敗例を知ること、②不安全要素を早期に取り除くこと、③運航にあたって十分な余裕をもつことの3つです。
過去の事故を知る・不安全要素を除去・十分な余裕をもつ
👨

試験官

不安全要素を分類すると何と何になりますか?

受験者

人・機械・環境の3つに分類されます。これらの事故要因が連鎖することで重大事故につながるため、途中で断ち切ることがパイロットに可能な安全策です。
人・機械・環境・連鎖を断ち切る
👨

試験官

VOICESとは何ですか?

受験者

航空安全情報自発報告制度のことで、ヒヤリハットに関する情報を幅広く収集・分析・共有することで事故予防に役立てる制度です。報告者が不利益処分を受ける懸念を排除するため、第三者機関のATECが運営しています。
VOICES・ヒヤリハット・自発報告・ATEC・第三者機関
👨

試験官

SMSとは何ですか?

受験者

Safety Management System(安全管理システム)の略です。航空安全プログラム(SSP)に沿って、安全に対する方針・目標の明確化、リスク管理、安全保証、安全促進を組織的・系統的に実施する仕組みです。運航者・空港管理者・航空保安業務提供者に設置が義務付けられています。
SMS・安全管理システム・SSP・組織的安全確保・設置義務

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まとめ

  • 航空安全とは「リスクが受け入れ可能なレベルまで低減・制御されている状態」であり、ゼロリスクではない
  • 安全対策の3つの柱は①過去の事故を知る②不安全要素を除去する③十分な余裕をもつ
  • 不安全要素は人・機械・環境の3つに分類され、連鎖を断ち切ることが重要
  • VOICES(自発報告制度)はヒヤリハット情報を収集・共有する第三者機関(ATEC)運営の制度
  • SMS(安全管理システム)は組織的・系統的に安全を確保するための仕組み

【免責事項】本記事は口述試験対策を目的とした解説記事です。記載内容は執筆時点の情報に基づいており、空域の運用・規則の詳細は変更される場合があります。実際の飛行および試験準備にあたっては、最新のAIP(航空路誌)・航空法令・所属訓練機関の指示を必ずご確認ください。

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