計器進入方式の種類|ILS・VOR・NDB・RNAVの違いを現役パイロットが解説
- 計器進入方式の種類と「精密進入」「非精密進入」の違い
- ILS(計器着陸装置)の仕組みとカテゴリー分類
- VOR・NDB・RNAVの特徴と使用される場面
- 決心高(DH)と最低降下高度(MDA)の違い
- 口述試験で頻出の進入方式に関する問答
「ILSとVOR進入の違いは?」という質問、口述試験で必ずといっていいほど出てきます。それぞれの方式がどのような仕組みで、どんな場面で使われるのかを正確に説明できるかどうかが問われます。
結論から言います。計器進入方式は「精密進入」と「非精密進入」の2つに大別され、使える誘導情報の種類によって方式が決まります。現役パイロットとしてIFR飛行を重ねる中で、各進入方式の特性を正しく理解していることが、実際のオペレーションでも安全の根幹になると実感しています。この記事を読めば、試験でも実務でも自信を持って進入方式を語れるようになります。
なお、この記事の内容はヘリコプターだけでなく、飛行機のパイロットを目指す方にも共通して役立つ知識です。
- 計器飛行証明の口述試験を控えている方
- ILS・VOR・NDB・RNAVの違いを整理したい方
- DH・MDAの使い分けを理解したい方
01計器進入方式とは
計器進入方式は、飛行場ごとに設定されてAIP(航空路誌)やチャートに公示されます。パイロットはこのチャートを事前に確認し、決められた手順に従って進入を行います。
02精密進入と非精密進入の違い
計器進入方式は大きく「精密進入」と「非精密進入」の2種類に分類されます。この区分の基準は、垂直方向の誘導情報(グライドパス)が提供されるかどうかです。
| 区分 | 精密進入 | 非精密進入 |
|---|---|---|
| 垂直誘導 | あり(グライドパス) | なし(または限定的) |
| 代表的な方式 | ILS・GLS(GBAS) | VOR・NDB・RNAV(一部) |
| 進入限界高度 | DH(決心高) | MDA(最低降下高度) |
| 最低気象条件 | 低い(悪天候でも進入可) | 精密進入より高い |
| 精度 | 高精度 | 精密進入より低い |
精密進入=水平・垂直両方向の誘導情報が提供される進入方式。代表例はILS。
非精密進入=水平方向の誘導のみ(垂直誘導なし)。VOR・NDB・RNAV(一部)。
03ILS(計器着陸装置)とは
ILSは3つの主要コンポーネントで構成されています。
| コンポーネント | 機能 | 主な仕様 |
|---|---|---|
| ローカライザー(LOC) | 水平方向の誘導。滑走路中心線への左右偏差を示す | 108.0〜111.975MHz VHF。進入端幅210m(700ft)に設定 |
| グライドスロープ(GS) | 垂直方向の誘導。通常3°の降下角を提供 | 328.6〜335.4MHz UHF。滑走路進入端から約1,000ft上方に設置 |
| マーカービーコン | 進入経路上の位置を知らせる | アウター(青)・ミドル(橙)・インナー(白)の3種 |
マーカービーコンについては、アウターマーカーがFAF(最終進入フィックス)付近に設置され、ミドルマーカーがCAT Iの決心高(DH)付近に設置されます。なお現在、国内ではアウターマーカーの代わりにDMEが使用されることが多く、アウターマーカー自体は設置されていない飛行場も多いです。
ILSはCAT I・CAT II・CAT IIIに分類され、最低気象条件が異なる。
CAT I:DH 200ft・RVR 550m
CAT II:DH 100ft・RVR 300m
CAT III:DH 0ft(条件による)・RVR 75〜200m(サブカテゴリーによる)
ローカライザーの電波幅は滑走路の進入端で210m(700ft)になるよう設定されている。1ドットの偏差は約1°。グライドスロープは地面からの反射波も利用するため、アンテナ前方の地表状況(積雪等)の影響を受けることがある。
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04VOR進入とは
VORはVHF帯(108〜117.95MHz)の電波を360°全方向に発射し、航空機はどの方位にいるかを知ることができます。VOR進入では、VORから滑走路に向かうラジアルをインバウンドコースとして使用し、MDA(最低降下高度)まで降下して着陸します。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 誘導の種類 | 水平方向のみ(垂直誘導なし) |
| 電波帯域 | VHF(108〜117.95MHz) |
| 有効到達範囲 | 高度10,000ftで約123NM(1.23×√高度) |
| 不感域 | VOR局の真上約60°以内はコーンオブサイレンス(信号不安定) |
| 進入限界高度 | MDA(最低降下高度) |
VOR局の真上60°以内では電波が安定しない不感域が発生する。VOR局の真上を通過する際はこの現象を認識しておく必要がある。
05NDB進入とは
NDBはLF/MF帯(200〜1,750kHz)の電波を全方向に発射します。VORと異なり、航空機側のADFがNDBの電波を受信して方位を表示します。夜間や天候の影響を受けやすく、精度はVOR・ILSに比べて低いため、NDB進入は最低気象条件がVOR進入より高く設定されることが多いです。
| VOR進入との比較 | NDB進入の特性 |
|---|---|
| 電波帯域 | LF/MF帯(200〜1,750kHz)。VORより低周波で障害物の影響を受けやすい |
| 精度 | VORより低い。風・地形・天候(雷雨)の影響を受けやすい |
| コンパスロケーター | アウターマーカーの場所に設置される小出力NDB(LOM) |
| 最低気象条件 | 通常VOR進入より高い |
06RNAV進入とは
RNAVには大きく2種類の進入方式があります。
| 方式 | 垂直誘導 | 精度・特徴 |
|---|---|---|
| RNAV(GNSS) 非精密進入 |
なし(MDA適用) | GPSを主体とした位置算出。VOR・NDBが不要 |
| RNP AR APCH (精密相当進入) |
あり(垂直誘導付き) | Required Navigation Performance。高精度・曲線進入も可能。山岳空港等に有効 |
従来のVOR・NDB進入は地上送信局の位置に制約されるが、RNAVは仮想フィックス(ウェイポイント)を任意に設定できるため、進入経路の設計自由度が高い。国内でも普及が進んでいる。
07DH(決心高)とMDA(最低降下高度)の違い
進入方式によって使用する進入限界高度が異なります。精密進入はDH、非精密進入はMDAを使用します。この違いを正確に説明できることが口述試験では必須です。
| 用語 | DH(Decision Height:決心高) | MDA(Minimum Descent Altitude:最低降下高度) |
|---|---|---|
| 適用方式 | 精密進入(ILS等) | 非精密進入(VOR・NDB・RNAV等) |
| 基準 | 飛行場標高からの高さ(AGL) | 平均海面からの高度(MSL) |
| 操作 | DHで着陸か進入復行かを決心する | MDAまで降下後、水平飛行しながら滑走路を視認する |
| ILS CAT Iの場合 | DH 200ft | (DHを使用するため適用外) |
非精密進入でMDAに達したとき、滑走路・目視物標を視認できない場合は進入復行(Go Around)を実施しなければならない。MDAを下回って飛行を継続することは禁止されている。
08口述試験 Q&A
まとめ
- ✓計器進入方式は「精密進入(垂直誘導あり)」と「非精密進入(垂直誘導なし)」に大別される
- ✓ILSはローカライザー(水平)+グライドスロープ(垂直)の精密進入方式。CAT I〜IIIに分類
- ✓ILS CAT Iの最低気象条件はDH 200ft・RVR 550m
- ✓VOR進入は水平誘導のみの非精密進入。不感域(コーン・オブ・サイレンス)に注意
- ✓NDB進入はVORより精度が低く、天候・夜間の影響を受けやすい
- ✓RNAV進入は地上施設に縛られない広域航法。GPS等を組み合わせて位置を算出
- ✓精密進入はDH(AGL基準)、非精密進入はMDA(MSL基準)を使用する
【免責事項】本記事は口述試験対策を目的とした解説記事です。記載内容は執筆時点の情報に基づいており、進入方式の最低気象条件・規則の詳細は変更される場合があります。実際の飛行および試験準備にあたっては、最新のAIP(航空路誌)・航空法令・所属訓練機関の指示を必ずご確認ください。
