計器進入方式の種類|ILS・VOR・NDB・RNAVの違いを現役パイロットが解説

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計器進入方式の種類|ILS・VOR・NDB・RNAVの違いを現役パイロットが解説

📖 読了約15分
✈ この記事でわかること
  • 計器進入方式の種類と「精密進入」「非精密進入」の違い
  • ILS(計器着陸装置)の仕組みとカテゴリー分類
  • VOR・NDB・RNAVの特徴と使用される場面
  • 決心高(DH)と最低降下高度(MDA)の違い
  • 口述試験で頻出の進入方式に関する問答

「ILSとVOR進入の違いは?」という質問、口述試験で必ずといっていいほど出てきます。それぞれの方式がどのような仕組みで、どんな場面で使われるのかを正確に説明できるかどうかが問われます。

結論から言います。計器進入方式は「精密進入」と「非精密進入」の2つに大別され、使える誘導情報の種類によって方式が決まります。現役パイロットとしてIFR飛行を重ねる中で、各進入方式の特性を正しく理解していることが、実際のオペレーションでも安全の根幹になると実感しています。この記事を読めば、試験でも実務でも自信を持って進入方式を語れるようになります。

なお、この記事の内容はヘリコプターだけでなく、飛行機のパイロットを目指す方にも共通して役立つ知識です。

✓ この記事が役立つ人
  • 計器飛行証明の口述試験を控えている方
  • ILS・VOR・NDB・RNAVの違いを整理したい方
  • DH・MDAの使い分けを理解したい方
⚠ こんな方は先に基礎を
  • IFRそのものがまだわからない方
  • 最低気象条件の基礎を先に確認したい方

✈ 「IFRの最低気象条件とは」を読む →
✈ 「計器飛行方式(IFR)とは」を読む →

01計器進入方式とは

定義
計器進入方式(Instrument Approach Procedure:IAP)とは、地上の航法援助施設や衛星信号を利用して、航空機を滑走路まで誘導するための標準化された飛行手順のこと。視界不良時でも安全に着陸できるよう、降下経路・高度・速度・最低気象条件が詳細に定められている。

計器進入方式は、飛行場ごとに設定されてAIP(航空路誌)やチャートに公示されます。パイロットはこのチャートを事前に確認し、決められた手順に従って進入を行います。

🙋

学生パイロット

計器進入って、どの方式を使うか自分で選べるんですか?

教官

基本的には管制から進入許可(Cleared for approach)が出て、その飛行場で使用可能な方式の中から選ぶ形になる。ただし管制が方式を指定する場合もある。いずれにせよ、飛行前にその飛行場で使える方式と最低気象条件をチャートで確認しておくことが大前提だよ。

02精密進入と非精密進入の違い

計器進入方式は大きく「精密進入」と「非精密進入」の2種類に分類されます。この区分の基準は、垂直方向の誘導情報(グライドパス)が提供されるかどうかです。

区分 精密進入 非精密進入
垂直誘導 あり(グライドパス) なし(または限定的)
代表的な方式 ILS・GLS(GBAS) VOR・NDB・RNAV(一部)
進入限界高度 DH(決心高) MDA(最低降下高度)
最低気象条件 低い(悪天候でも進入可) 精密進入より高い
精度 高精度 精密進入より低い
🔑 試験頻出:精密進入の定義
精密進入=水平・垂直両方向の誘導情報が提供される進入方式。代表例はILS。
非精密進入=水平方向の誘導のみ(垂直誘導なし)。VOR・NDB・RNAV(一部)。

03ILS(計器着陸装置)とは

定義
ILS(Instrument Landing System:計器着陸装置)とは、ローカライザー(水平方向誘導)とグライドスロープ(垂直方向誘導)の2つの電波ビームを組み合わせて、航空機を滑走路の延長線上から精密に誘導する着陸支援システム。精密進入方式の代表。

ILSは3つの主要コンポーネントで構成されています。

コンポーネント 機能 主な仕様
ローカライザー(LOC) 水平方向の誘導。滑走路中心線への左右偏差を示す 108.0〜111.975MHz VHF。進入端幅210m(700ft)に設定
グライドスロープ(GS) 垂直方向の誘導。通常3°の降下角を提供 328.6〜335.4MHz UHF。滑走路進入端から約1,000ft上方に設置
マーカービーコン 進入経路上の位置を知らせる アウター(青)・ミドル(橙)・インナー(白)の3種

マーカービーコンについては、アウターマーカーがFAF(最終進入フィックス)付近に設置され、ミドルマーカーがCAT Iの決心高(DH)付近に設置されます。なお現在、国内ではアウターマーカーの代わりにDMEが使用されることが多く、アウターマーカー自体は設置されていない飛行場も多いです。

🔑 ILSのカテゴリー分類
ILSはCAT I・CAT II・CAT IIIに分類され、最低気象条件が異なる。
CAT I:DH 200ft・RVR 550m
CAT II:DH 100ft・RVR 300m
CAT III:DH 0ft(条件による)・RVR 75〜200m(サブカテゴリーによる)
ローカライザーコースの幅に注意
ローカライザーの電波幅は滑走路の進入端で210m(700ft)になるよう設定されている。1ドットの偏差は約1°。グライドスロープは地面からの反射波も利用するため、アンテナ前方の地表状況(積雪等)の影響を受けることがある。

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04VOR進入とは

定義
VOR進入とは、VOR(VHF全方向式無線標識)を利用した計器進入方式。水平方向の誘導情報のみを提供する非精密進入方式であり、垂直誘導(グライドパス)は提供されない。

VORはVHF帯(108〜117.95MHz)の電波を360°全方向に発射し、航空機はどの方位にいるかを知ることができます。VOR進入では、VORから滑走路に向かうラジアルをインバウンドコースとして使用し、MDA(最低降下高度)まで降下して着陸します。

項目 内容
誘導の種類 水平方向のみ(垂直誘導なし)
電波帯域 VHF(108〜117.95MHz)
有効到達範囲 高度10,000ftで約123NM(1.23×√高度)
不感域 VOR局の真上約60°以内はコーンオブサイレンス(信号不安定)
進入限界高度 MDA(最低降下高度)
🔑 VORの不感域「コーン・オブ・サイレンス」
VOR局の真上60°以内では電波が安定しない不感域が発生する。VOR局の真上を通過する際はこの現象を認識しておく必要がある。

05NDB進入とは

定義
NDB進入とは、NDB(Non-Directional Radio Beacon:無指向性無線標識)を利用した計器進入方式。ADF(自動方向探知機)を使ってNDBの方位を確認しながら進入する。非精密進入方式であり、精度はVOR・ILSより劣る。

NDBはLF/MF帯(200〜1,750kHz)の電波を全方向に発射します。VORと異なり、航空機側のADFがNDBの電波を受信して方位を表示します。夜間や天候の影響を受けやすく、精度はVOR・ILSに比べて低いため、NDB進入は最低気象条件がVOR進入より高く設定されることが多いです。

VOR進入との比較 NDB進入の特性
電波帯域 LF/MF帯(200〜1,750kHz)。VORより低周波で障害物の影響を受けやすい
精度 VORより低い。風・地形・天候(雷雨)の影響を受けやすい
コンパスロケーター アウターマーカーの場所に設置される小出力NDB(LOM)
最低気象条件 通常VOR進入より高い

06RNAV進入とは

定義
RNAV(Area Navigation:広域航法)進入とは、GPS・VOR・DMEなどの複数の航法センサーを組み合わせて算出した位置情報を利用した計器進入方式。特定の地上施設(VOR・NDB)の直上や延長線上を飛ばなくても進入できる柔軟性が特徴。

RNAVには大きく2種類の進入方式があります。

方式 垂直誘導 精度・特徴
RNAV(GNSS)
非精密進入
なし(MDA適用) GPSを主体とした位置算出。VOR・NDBが不要
RNP AR APCH
(精密相当進入)
あり(垂直誘導付き) Required Navigation Performance。高精度・曲線進入も可能。山岳空港等に有効
🔑 RNAVの強み:地上施設に依存しない
従来のVOR・NDB進入は地上送信局の位置に制約されるが、RNAVは仮想フィックス(ウェイポイント)を任意に設定できるため、進入経路の設計自由度が高い。国内でも普及が進んでいる。

07DH(決心高)とMDA(最低降下高度)の違い

進入方式によって使用する進入限界高度が異なります。精密進入はDH、非精密進入はMDAを使用します。この違いを正確に説明できることが口述試験では必須です。

用語 DH(Decision Height:決心高) MDA(Minimum Descent Altitude:最低降下高度)
適用方式 精密進入(ILS等) 非精密進入(VOR・NDB・RNAV等)
基準 飛行場標高からの高さ(AGL) 平均海面からの高度(MSL)
操作 DHで着陸か進入復行かを決心する MDAまで降下後、水平飛行しながら滑走路を視認する
ILS CAT Iの場合 DH 200ft (DHを使用するため適用外)
MDA以下への降下禁止
非精密進入でMDAに達したとき、滑走路・目視物標を視認できない場合は進入復行(Go Around)を実施しなければならない。MDAを下回って飛行を継続することは禁止されている。

08口述試験 Q&A

👨

試験官

精密進入と非精密進入の違いを説明してください。

受験者

精密進入とは、水平・垂直両方向の誘導情報が提供される進入方式で、ILSが代表例です。垂直誘導(グライドパス)があるため精度が高く、最低気象条件も低く設定できます。非精密進入は水平方向の誘導のみで、垂直誘導がありません。VOR・NDB・RNAVの一部が該当し、精密進入より最低気象条件が高くなります。
精密進入・非精密進入・垂直誘導・水平誘導
👨

試験官

ILSのローカライザーとグライドスロープについて説明してください。

受験者

ローカライザーはVHF帯(108〜111.975MHz)の電波で水平方向の誘導を行い、滑走路中心線への左右偏差を示します。グライドスロープはUHF帯(328.6〜335.4MHz)の電波で垂直方向の誘導を行い、通常3°の降下角を提供します。この2つの電波ビームを組み合わせて、航空機を滑走路に精密に誘導します。
ローカライザー・グライドスロープ・VHF・UHF・3°降下角
👨

試験官

ILS CAT Iの最低気象条件を答えてください。

受験者

ILS CAT Iの最低気象条件は、決心高(DH)200フィート、RVR(滑走路視距離)550メートルです。
CAT I・DH 200ft・RVR 550m
👨

試験官

DH(決心高)とMDA(最低降下高度)の違いを説明してください。

受験者

DHは精密進入(ILS等)に使用される進入限界高度で、飛行場標高からの高さ(AGL)で示されます。DHに達した時点で着陸か進入復行かを決心します。MDAは非精密進入(VOR・NDB等)に使用され、平均海面からの高度(MSL)で示されます。MDAに達した後は水平飛行を維持しながら滑走路を視認し、見えない場合は進入復行を実施します。
DH・MDA・AGL・MSL・進入復行
👨

試験官

RNAVとはどのような航法方式ですか?従来の方式と比較して答えてください。

受験者

RNAVは広域航法とも呼ばれ、GPS・VOR・DMEなど複数の航法センサーを組み合わせて位置を算出し、地上施設の直上や延長線上に縛られず任意のウェイポイントを飛行できる航法方式です。従来のVOR・NDB進入は地上送信局の位置に制約されますが、RNAVは仮想フィックスを設定できるため進入経路の設計自由度が高く、地上施設のない地域でも精度の高い進入が可能です。
RNAV・広域航法・ウェイポイント・GPS・設計自由度

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まとめ

  • 計器進入方式は「精密進入(垂直誘導あり)」と「非精密進入(垂直誘導なし)」に大別される
  • ILSはローカライザー(水平)+グライドスロープ(垂直)の精密進入方式。CAT I〜IIIに分類
  • ILS CAT Iの最低気象条件はDH 200ft・RVR 550m
  • VOR進入は水平誘導のみの非精密進入。不感域(コーン・オブ・サイレンス)に注意
  • NDB進入はVORより精度が低く、天候・夜間の影響を受けやすい
  • RNAV進入は地上施設に縛られない広域航法。GPS等を組み合わせて位置を算出
  • 精密進入はDH(AGL基準)、非精密進入はMDA(MSL基準)を使用する

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【免責事項】本記事は口述試験対策を目的とした解説記事です。記載内容は執筆時点の情報に基づいており、進入方式の最低気象条件・規則の詳細は変更される場合があります。実際の飛行および試験準備にあたっては、最新のAIP(航空路誌)・航空法令・所属訓練機関の指示を必ずご確認ください。

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