IFR(計器飛行)
RNAVとRNPとは|広域航法の仕組みと進入方式の違いを現役パイロットが解説
📋 この記事でわかること
- RNAV(広域航法)の定義・仕組みと従来航法との違い
- RNPとRNAVの違い・性能監視機能の役割
- 航法精度(RNAV1・RNAV5)の意味とGPS RAIMの基礎
- RNAV進入・RNP AR APCH進入の特徴と口述試験での答え方
「RNAVはGPSのことでしょ?」と思っている方は少なくありません。しかし実際には、RNAVはGPSに限らず複数のセンサーを組み合わせた広域航法の総称であり、GPSはそのひとつのセンサーに過ぎません。この誤解は口述試験でも頻繁に問われるポイントです。ヘリコプターだけでなく飛行機のパイロットを目指す方にも共通して役立つ内容です。
✓ この記事が役立つ人
- RNAVとRNPの違いが整理できていない方
- GPS RAIMという言葉を初めて聞いた方
- RNAV進入方式について口述対策をしたい方
目次
01RNAVとは何か
RNAV(広域航法)の定義
RNAV(Area Navigation:広域航法)とは、地上局や衛星といった無線施設からの電波受信、または慣性航法装置により任意の経路を飛行する航法のことをいいます。従来の航法が航空保安無線施設の直上や両局を結んだ経路上を飛行するのに対し、RNAV航法は任意に設定した地点(ウェイポイント)を結んで飛行できるため、運航の効率化や空域の有効利用が可能となります。
RNAVって結局GPSで飛ぶことですよね?
よくある誤解です。RNAVはGPSに限りません。DME・VOR・IRUなど複数のセンサーを組み合わせて位置を計算する「広域航法の仕組み」全体を指す言葉で、GPSはそのセンサーのひとつに過ぎません。
従来の航法(VOR・NDB等)では、航空保安無線施設を結ぶ経路(V/W Airway)の上しか飛行できませんでした。RNAVではウェイポイントを任意に設定できるため、より直線的な経路や、施設がない空港への進入が可能になります。R-NAV航空路の名称にはL・M・N・Y・Z等の頭文字がつくのが特徴です。
| 項目 | 従来航法(VOR・NDB等) | RNAV |
|---|---|---|
| 飛行経路 | 地上施設を直接結んだ経路のみ | ウェイポイントを任意に設定 |
| 経路の柔軟性 | 低い(施設依存) | 高い(施設がない地点も設定可) |
| 空域の有効利用 | 制限が多い | 効率的な経路設定が可能 |
| 位置計算 | 施設からの方位・距離 | 複数センサーをコンピューターで統合 |
02RNAVの航法センサー:GPS・DME・IRU
RNAVでは通常、以下の3種類のセンサーを組み合わせてコンピューターが自機位置を計算します。
| センサー | 種別 | 仕組み |
|---|---|---|
| DME/DME | 航空保安無線施設 | 複数のDME局からの距離情報を組み合わせてFIXを計算。精度を満たすために複数のDME局を受信できる必要がある。VOR/DMEも利用可。 |
| IRU(IRS) | 慣性航法装置 | IRU(Inertial Reference Unit)により、機体の3軸の加速度を検知して自機位置を計算する。外部信号不要で独立して動作するが、時間とともに誤差が蓄積する。 |
| GNSS(GPS) | 衛星測位システム | 全球航法衛星システムの総称。米国が運用するGPSはGNSSのひとつ。衛星からの電波を受信して位置を算出する。RNAVに必須ではなく、あくまでセンサーのひとつ。 |
🔑 試験頻出:「RNAV=GPS」は誤り。GPSはRNAV運航を行うためのセンサーのひとつであり、必須ではありません。DME/DMEやIRUでもRNAV運航は可能です。
03航法精度(RNAV1・RNAV5)の意味
航法精度とは
RNAV運航における「航法精度」とは、経路の横方向の誤差が全飛行時間中の95%においてどの範囲内に収まるかを示す数値です。数字が小さいほど高精度を要求されます。
| 種別 | 精度の定義 | 主な適用場面 |
|---|---|---|
| RNAV1 | 横方向誤差が全飛行時間の95%で1NM以内 | SID・STAR(標準出発・到着経路)に適用 |
| RNAV5 | 横方向誤差が全飛行時間の95%で5NM以内 | 日本のR-NAV航空路はRNAV5で構成 |
| RNAV進入 | 航法精度指定なし(GNSS進入) | GNSS(GPS)を使用した非精密進入 |
| RNP AR APCH | 航法精度0.3NM(特殊承認が必要) | 山間地・障害物が多い飛行場への精密進入 |
なお、RNAVの運航には航空法上「省令に定める特別な方式による航行」として大臣の許可が必要です。機材を揃えただけではRNAV運航はできず、許可基準および審査要領に従って準備・申請をする必要があります。
04RNPとRNAVの違い
RNP(Required Navigation Performance)の定義
RNPとは、機上の性能監視機能とパイロットへの自動警報機能を必要とする特別なRNAV運航です。通常のRNAV運航では自動警報機能がないためにレーダーサービスを受けることで経路からの逸脱を監視していますが、RNP運航では機上監視警報装置が作動するため、レーダー覆域外でも運航が可能です。
RNPとRNAVはどう違うんですか?同じじゃないんですか?
RNPはRNAVに「機上での性能監視機能と自動警報機能」を追加したものです。RNAVはレーダー覆域内でしか運航できませんが、RNPはその機能のおかげでレーダー覆域外でも運航できます。これにより、今までRNAV経路を設定できなかった空港にも経路が設定できるようになります。
| 比較項目 | RNAV運航 | RNP運航 |
|---|---|---|
| 要件 | レーダー覆域内でのみ可能 | レーダー覆域外でも可能 |
| 機上監視・警報 | なし(レーダーで代替) | 機上監視警報装置が必要 |
| センサー | VOR/DME、DME/DME、IRU、GNSS | GNSSが基本 |
| 洋上 | RNAV10(精度10NM) | RNP4(精度4NM) |
| 航空路 | RNAV5(精度5NM) | 設定なし |
| ターミナル | RNAV1(精度1NM) | Basic-RNP1(精度1NM) |
| 進入 | RNAV(GNSS)APCH(精度指定なし) | RNP AR APCH(精度0.3NM)・RNP APCH(精度0.3NM) |
05GPS RAIMとは
GPS RAIM(Receiver Autonomous Integrity Monitoring)
GPS RAIMとは、GPSが5個の衛星を受信することで完全性を自律的にモニタリングする機能です。5個の受信データから4個のデータの組み合わせを5組作り、各組を比較して突出したデータがあれば、該当する衛星のデータを除外します。GPS RAIMは5個の衛星データを受信できない場合に、NOTAMにより周知されます。
| 衛星受信数 | できること |
|---|---|
| 1個 | 衛星から等距離の球面のいずれかに位置することがわかる |
| 2個 | 2つの球面が重なる円周上のいずれかに位置することがわかる |
| 3個 | 2個の球面が重なった円と1つの球面が交わる2点のいずれかに位置することがわかる(実質1点に絞れるが時計誤差あり) |
| 4個 | 4つの衛星から信号受信で受信機側の時計誤差を修正し正確な位置を測定できる(航法に必要な最低数) |
| 5個 | 4個の組み合わせを5組作れる。衛星側の故障・データ異常を検知しGPS信号の完全性を維持(RAIM動作に必要) |
GPS RAIMが報じられているからといって、一切のR-NAV運航ができなくなるわけではありません。航空機のタイプにより、GPS以外のR-NAVセンサー(DME/DME、VOR/DME、IRU)の運用状況は異なります。RAIM時でもR-NAV運航が可能な場合があります。GPS RAIMのNOTAMには①進入②ターミナル③エンルートの3種類があります。
06RNAV進入とRNP AR APCH進入
RNAV・RNPを活用した計器進入方式として、日本では主に以下の2種類が運用されています。
| 項目 | RNAV(GNSS)APCH | RNP AR APCH |
|---|---|---|
| 航法精度 | 指定なし(GNSS使用) | 0.3NM(特殊承認必要) |
| 進入形式 | 非精密進入(MDA方式) | 精密進入に準じた高精度進入 |
| 特徴 | ILSのない飛行場へのGNSS進入 | 曲線経路進入(RF Leg)が可能。山間地・障害物が多い飛行場向け |
| 機上要件 | GNSS受信機 | GNSS+性能監視警報装置(特殊承認) |
| GPSRAIMの確認 | 必要(進入フェーズ) | 必要(進入フェーズ) |
🔑 RNP AR APCHでは曲線経路(RF Leg:Radius to Fix)を飛行できます。これにより山に囲まれた飛行場でも、障害物を回り込むような進入経路の設定が可能です。従来のILSでは対応できなかった空港へのアクセスが改善された点が大きな特徴です。
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07口述試験 Q&A
RNAVについて説明してください。
RNAV(広域航法)とは、地上局や衛星といった無線施設からの電波受信、または慣性航法装置により任意の経路を飛行する航法です。従来の航法が航空保安無線施設を結んだ経路上を飛行するのに対し、RNAV航法は任意に設定したウェイポイントを結んで飛行できるため、運航の効率化や空域の有効利用が可能となります。
キーワード:広域航法・ウェイポイント・任意の経路・運航効率化・空域有効利用
RNAV航法において航空機はどのように自機位置を把握しているか述べてください。
通常以下の3つのセンサーの情報の組み合わせによりコンピューターが自機位置を計算しています。①航空保安無線施設:複数のDME局からの距離情報を組み合わせてFIXを計算します。②慣性航法装置(IRU):機体の3軸の加速度を検知して自機位置を計算します。③GNSS(GPS等):衛星からの電波を受信して位置を算出します。なおRNAVはGPSを必須とするものではなく、GPSはRNAVセンサーのひとつです。
キーワード:DME/DME・IRU・GNSS(GPS)・コンピューターで統合・GPSは必須ではない
RNPについて説明してください。RNAVとどう違いますか?
RNP(Required Navigation Performance)とは、機上の性能監視機能とパイロットへの自動警報機能を必要とする特別なRNAV運航です。通常のRNAV運航はレーダー覆域内でしか運航できませんが、RNP運航では機上監視警報装置が作動するためレーダー覆域外でも運航が可能です。これにより、従来RNAVを設定できなかった空港にも経路を設定することができます。
キーワード:性能監視機能・自動警報機能・レーダー覆域外でも可・機上監視警報装置
GPS RAIMとは何ですか?
GPS RAIMとは、GPSが5個の衛星を受信することで完全性を自律的にモニタリングする機能です。5個の受信データから4個の組み合わせを5組作り、各組を比較して突出したデータがあれば該当衛星のデータを除外します。GPS RAIMは5個の衛星データを受信できない場合にNOTAMにより周知されます。ただしGPS RAIMが報じられていても、DME/DMEやIRUによるR-NAV運航が可能な場合があります。
キーワード:5衛星・完全性モニタリング・異常衛星除外・NOTAMで周知・RAIM時も他センサーで運航可
RNAV1とRNAV5の違いを説明してください。
いずれもRNAV運航における航法精度の種別です。RNAV1は経路の横方向の誤差が全飛行時間の95%において1NM以内であることを要求するもので、SIDやSTARに適用されます。RNAV5は同じく横方向誤差が5NM以内を要求するもので、日本のR-NAV航空路がRNAV5で構成されています。数字が小さいほど高精度が求められます。
キーワード:航法精度・横方向誤差・95%・RNAV1は1NM(SID/STAR)・RNAV5は5NM(航空路)
まとめ
- ✓RNAVとはウェイポイントを任意に設定して飛行する広域航法。GPSのみを指す言葉ではなく、DME/DME・IRU・GNSSを組み合わせて使う。
- ✓航法精度はRNAV1(1NM・SID/STAR)・RNAV5(5NM・航空路)・RNP AR APCH(0.3NM・精密進入)など用途によって異なる。
- ✓RNPはRNAVに機上性能監視・自動警報機能を追加したもの。レーダー覆域外でも運航可能な点が最大の違い。
- ✓GPS RAIMは5衛星受信により完全性を自律監視する機能。RAIM時でも他センサーでR-NAV運航が可能な場合がある。
- ✓RNAV運航には大臣の許可が必要。機材を揃えるだけでは不十分で、許可基準に従った準備・申請が必要。
【免責事項】本記事は口述試験対策を目的とした解説記事です。記載内容は執筆時点の情報に基づいており、法令・制度の詳細は変更される場合があります。実際の飛行および試験準備にあたっては、最新のAIP(航空路誌)・航空法令・所属訓練機関の指示を必ずご確認ください。

